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俺は立ち上がって静真達の一団に近付き、バリケードの役目を果たしていた学生の肩に手を置いた。
「悪いが、ちょっと通してもらうぞ…」
振り返った学生達は案の定抜け殻の様な虚ろな表情でフラフラと俺に殺到して来た。
ちっ、手荒に行くわけにもいかんな…騒ぎが大きくなっても面倒だからな。
俺は素早く左手を植物の蔦の様に変化させて殺到して来た学生達を縛り上げる、粗末な操り方で助かった。
力無い抵抗をする学生達を押しのけて俺は女を振り向かせた、その顔は人間のそれではなかった。
「ちっ、やっぱりか…コイツは臭う筈だ」
「キサマ…私のショクジノ邪魔を―――!?」
電車が目的地にたどり着き、揺らいだ瞬間に縛っていた学生達を解放して外へ放り出す。
他の学生達も全て電車から降り、残るのは俺と静真…そして化け物だけになった。
「人間ガ…私の邪魔ヲスルのか…!?」
「只の人間って訳でもない…俺もお前同様『訳あり』さ」
怒りを露わに俺の首を締め上げようと伸ばされた化け物の腕を、俺は『触手』で絡めとる。
「そいつは俺のだからな…勝手に食われちゃ、こっちが困るんだよ…」
言いながら俺は化け物を投げ捨てる、悲鳴と共に天井を突き破り消えた化け物に支えられていた静真も力尽きて崩れ落ちる様に倒れかける。
それを抱き止めて俺は静真をシートの上に寝かせた。
「キシャアアアアア!!」
天井の方から電車の音とは明らかに違う鳴き声が響く、同時に天井がボコボコとへこみだし、そして砕けた。
「それがお前の『本性』か…なるほど、お前その女性を『取り込んだ』クチか」
俺の前に現れたそれは二足歩行の生物だが、勿論人間ではない…蝙蝠の様なその外見が女性だったとは思えない低く、毒々しい唸り声をあげていた。
「まぁ、俺もお前の事は言えないか…」
ジリジリと近付いて来る蝙蝠の化け物が動きを止めた。
「…分かるのか、そうだ…俺もちょっと普通じゃない、まぁお前との違いはお前みたいに『取り込んだ』んじゃなく、俺が『手に入れた』んだけどな!」
―――――『反転』!!
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