0:目醒めの呪文

11/19
前へ
/19ページ
次へ
いつ頃だったのかはよく覚えていない。 この“力”に気付いたのは。 “力”―――。オレの場合、人より数倍…いや何千倍も優れた“運動性能力”。 今持てる力を全て出し切って走れば、学校までの片道3キロ、4分もあれば余裕で着いたし。 (深夜にコソッと確認済み) ちょっとジャンプすれば15メートルは垂直に跳べたし。 (こちらも深夜にコソッと確認済み) …当時、もう12歳だったし、こんな事が世間に広まればあっという間にニュースになることは判っていた。 ―――異端の目で見られることも。 オレは人間でありたい。 皆の目に映るオレは最後まで人間でありたい。 幼いながらに、そう、強く思った。 それに今のオレには、気になるコがいた。 そのコにだけは、絶対知られたくなかった。 隣のクラスの、ミズキちゃん。 色白で、少し身体の弱い“守ってあげたくなる”タイプの。 勿論…誰にも打ち明けてはいない。 ムネの中に秘めた淡い“想い”―――だった。 ある日、ソレはオレの目の前で起こった。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加