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お互いに『事態』を認識した時は既に遅く。
乗用車は彼女を天高く、跳ね上げた。
スローモーションの如く、時間は流れた。
笑顔のまま跳ね上げられた彼女。
ドサリと鈍い音がし、数メートル先のアスファルトに彼女は横たわった。
乗用車は更にスピードを上げ、遠ざかっていった。
「オイ……オイオイオイ…嘘だろ…マジ?………んで…」
音を聞き付け、先程居座っていたコンビニから店員やら客が出て来た。
側を行く通行人や、車からも人が降りてきて、その場に集まってきた。
「オイ119番!あと警察!」誰かが言っていた。
皆の声が遠ざかっていく。
彼女の笑顔が頭から離れない。
「君!大丈夫か?」「待って!こういう時、触らない方が良いって聞いた事あります!」「血とまらないな…どこから出血だ?」「頭…かな?」「ちょっと…大丈夫なの?」「誰か医者いないか?」「轢き逃げ?」「サツと救急車おっせー」「誰かさっきの車のナンバー見た人は?」「近くの個人病院の医者呼んできてー」「きみ!」
「きみ!!!」
グッと誰かに肩を捕まれ、オレは一瞬で現実に戻ってこれた。
「ハッ…!」
「きみの知り合いじゃないのか?彼女」
コンビニで…隣合わせて立ち読みしていた人だった。
「さっき彼女を見て店を出て行ったんじゃないのか?」
その人は視線でオレと彼女を指差した。
彼女の元にようやく駆け出した。
「ミズキちゃんっ!」
「知り合いか?君」「触らない方がいいよ」「このコの家の人に連絡してみて」
周りの人に一斉に声をかけられる。
彼女は右半身を下に横たわっていた。
暗い場所でも見てとれる顔は蒼白で、頭部からだと思われる流れ出る血は止まる事を知らないようだった。
意識は無いようだった。
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