0:目醒めの呪文

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・麻来 夏樹編 初めて人を殺したのは10歳の誕生日。 その日は日曜日で、母は朝からケーキ作りに勤しんでいた。 父は大きなプレゼントを抱えて帰宅した。 重なる幸せな笑い声。 家族の記念日の一つである俺の誕生日。家族は何時にも増して笑顔になるから、俺は自分の誕生日が大好きだった。 やがて夜になり、食卓には手作りのケーキと“ごちそう”が並んだ。 ケーキの上にはカラフルな10本の蝋燭が立てられた。 両親がバースデーソングを歌ってくれる。 父親が部屋の明かりを消す。 途端に部屋は蝋燭独特のぼうっとした灯のみになる。 蝋燭の向こうに見える満面の笑みの両親の顔。 …これが両親の笑顔を見た最後となった。
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