0:目醒めの呪文

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込み上げてくる照れ笑いを隠しつつ、蝋燭を吹き消す態勢に入る。 息を吸い込んだその時。 ピンポーン 水を差すように鳴ったチャイム。 「…誰?いい時に…もう…。」 怪訝な様子を少し表情に表し、椅子から立ち上がる母親。 「どちら様ですか?」 部屋の明かりを再度点しつつ、インターフォンのマイク部に質問を投げかける。 「夜分にすいません。宅配便です。」 インターフォンの画面には作業着を着た人が段ボールを抱えた様子が映し出されていた。 「はい、今行きます。」 パタパタとスリッパの音を響かせ母親は玄関へと向かっていった。 「通販でも届いたかな?」 父親が溜息まじりに言った。 ゴハンのおあずけをくらった状況になり、俺は少し拍子抜けをしていた。 ポタリ 蝋燭が溶け始めた。 ソレは真っ直ぐ伸びる自信の柄を伝い、せっかくのケーキに流れ出そうになっている。 ポタリ ――あぁ、蝋がケーキに付いちゃうよ…。 自然と手に力が入った。 まだあどけなさが残る強い視線は蝋燭に集中した。 ポタリ 早く戻って来ないかな、お母さん…。
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