0:目醒めの呪文

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「キャアアァアッ!!!お父さんっ、お父さんっ!!」 ………お母さん? 空間が一気に張り詰める空気で満たされた。 「!? どうしたっ、奏子っ!!」 10年生きていて、初めて聞いた母親の金切り声。 タダ事じゃない“何か”が玄関先で起こったのはすぐに理解した。 ドタバタと慌て玄関に向かう父親。 俺は…凍りついたかのように身動きひとつ出来なかった。 ビリリッ 乾燥した鈍い音が聞こえてきた。 ………? 何だよ………今の…音。 「イヤーッ!やめてやめてェーッ!お父さんっお父さんっ…秀明っ!!」 「奏子!…貴様らっ!」 ガシャーン 「…!!」 続いて大きな音。 背中に悪寒が走る。 そして本能が察知する。 この状況…“恐怖”。 玄関には絶対行くなと本能が言ってる。 今すぐ目の前の庭へと続く窓から逃げろと言ってる。 でも……体が………動かない………! 「イャアアアッ!やめてェー!秀明ぃー!!」 父親の声は聞こえなくなっていた。 代わりに母の悲痛な声はいつまでも。 ソレを聞いたら居てもたってもいられなくなった。 「おかぁさんっ…!!」 ダッとリビングから玄関に続くドアに、がむしゃらに駆け出す。 「…夏樹…来てはだめ…逃げ………なさい…はや…くっ…!」 「…おかぁ………さん…?おとぅさ………?」
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