バイト先には

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「ミキ先輩が僕に相談なんて珍しいですね。」 「そうだっけ?」 午後8時、バイト終了とともにゴウに「相談あるから一緒に飯いかねぇ?」と声を掛けた。 「まぁ、いいですけど。」 「ありがとー。何食う?」 「何でもいいですよ。」 「『きよ美』はどう?」 「ああ、良いですね。あそこ量が多いので僕好きです。」 細い割にめちゃくちゃ食うもんな、お前。 あそこなら値段も安いし。 「奢りですか?」 「奢りですよ。」 「ありがとうございます。」 にっこにこした顔で俺の後をスキップ気味についてくる後輩。 こーゆー時だけ可愛い。 普段は憎たらしい。でも男前だから、なんか、何をしても許してしまう自分が憎い。 「僕、バイク取ってきます。」 「あ、じゃあ俺チャリだから先に向かってるわ。」 「分かりました。ではまた後で。」 「うぃー。」 片手を挙げて返事をすると、ぐいぐいと力を入れて自転車を漕ぎ出した。 中古で5500円のオレンジの愛車。有池号。 こっちに下宿したと同時に近くの中古自転車屋さんで購入した。この美味しそうなオレンジのボディーに一目惚れ。迷わず自転車屋のおっちゃんに「コレ下さい。」と言った。 他にもっと安い自動車も何台かあったし、予算は5000円までと決めてたのに、他に目がどうしても行かなかった。もう「コレじゃないと絶対嫌だ。」とさえ思った。 そんな愛しい愛しい有池号と出会って今年で3年目。 最後の最後まで大切にするから、これからも宜しくね❤
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