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表面の体裁だけでも取り繕ってカカシは平常心の振りをした
「見せたい物があるんが下忍の足じゃあ、ちょっとキツいかも…」
嫌みじゃなく本当に心配して言った言葉だったが、少年のプライドはかなり傷ついた
「あのなぁ~!下忍を馬鹿にし過ぎじゃねぇ?」
ムッとしている少年を見て、どうしたらいいのか分からないカカシは
「じゃあ、行こう…」
と、駆け出した
暫く、木々を跳び進んだ
「はぁはぁはぁはぁ…」
少年は今にも倒れそうな程、疲労困憊だった
カカシは気をつけて、かなりの力をセーブしながら木々を跳んで来たが、それでも、アカデミー出たての下忍では付いて行く事すら困難だった
かなり苦しそうな少年を見て、無言のまま視線を下に落とした
「ここから先は下を歩くぞ。枝が細くなるから上はここまでだ…」
少年は少し安堵の表情を浮かべて、コクンと頷くのが精一杯だった
枝が細くなるなんて嘘だった
さっきの一言で少年のプライドが傷ついた時の顔を思い出すと、何故か、あんな顔を二度とさせたくないと思った
今まで、他人がどう思おうがお構いなしに現実を突き付けて傷付けていた
(他人を守りただなんて自分が思うなんて…)
下を歩く事にしても、少年の足は既にふらふらだった
カカシは少年を見て
(怒るかな…?)
と、オズオズと後ろに手を伸ばした
少年はこいつが、自分の為に、下を歩く為の嘘に薄々気付いていた
申し訳なさそうに、差し出された手が、とても暖かい物に見えて不意に涙が零れそうだった
少年は無言のまま、カカシの手を握り、二人は暫く歩いて行った
かなり日も傾き掛けていた
(何とか間に合ったな…)
カカシはクルリと少年の方を向いて、少年の額あてを目隠しの様にずり下げた
「うわっ!?何!?」
行き成りの出来事に慌てふためいていると
「良いって言うまで、とるなよ?」
と、優しく心地良く響く声だった
目隠しをしたまま歩いているのに、少年は、まったく不安を感じず歩んでいた
カカシと繋がってる手が、とても暖かく、心強くて、このまま時間が止まれば良いとまで思いだしていた
(俺、何か今日変だ…)
少年も自分の中に芽生えた感情に焦っていた
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