171人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな心地良い時間はあっという間だった
カカシの足がピタリと止まった
同時に体全体が持ち上げられる様な突風が吹き付けて来た
「いいよ…目空けて…」
風に飛ばされそうな体を踏ん張って、額あてをずり上げた
「う……わぁ……」
少年の目の前に広がったのは、夕日に照らされ、黄金色に輝く、木の葉の里だった
遥か向こうに、歴代の火影様のお顔を彫った、火影岩が小さく見える
あまりの見事なまでの風景に言葉無く少年が佇んでいると
「俺の師匠が教えてくれた場所だ…あんたが初めて連れて来た奴だ…」
夕日の所為なのか、隣の上忍は真っ赤に染まっていた。
「ありがとう……」
そう言った少年の声がどことなく変な感じがして、カカシが少年を見ると、少年は只静かに、ハラハラと涙を零していた
カカシはギョッとして固まってしまった
(何で泣いてるの?俺、何か不味い事した?実は迷惑だった?)
少年はカカシが自分の流す涙の分けが分からずに狼狽えているのを見て、手の甲でガシガシと涙を拭いて
「色々溜め込んでいた物が一気に吹き出した」
と、いつもの笑顔で話し出した
里が一望出来る場所で、二人は膝を抱え並んで座っていた
少年は静かに自分の身の上に起きた事を少しだけ話してくれた
あの、忌まわしき事件の時に大切なモノを全て無くしてしまった事
火影様が親代わりになって親身になってくれてる事
そして…寂しくて…あの日の出来事を思い出すと怖くて一晩中震える日がある事
カカシは隣にいる少年を抱きしめたかった
でも、それは今の関係に終わりを告げる事でもある
(あぁ、こーゆ事かなぁ…アスマの言ってた事は…何かを、誰かを守りたいって…)
すっかり日が落ちて、二人は無言のまま帰途についた
帰りはどちらともなく、手を取り合って歩いた
別れを惜しむ様に、ゆっくりとした足取りで待ち合わせをした場所まで歩いた
後、少しで到着する所でカカシ重い口を開いた
「俺、明日から長期の任務で、その為の最後の休暇だったんだ…」
最初のコメントを投稿しよう!