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ベル骸
「失敗作が逃げたぞ!早く捕まえて処分するんだ!」
研究員達の騒ぎ声と、ドタドタという足音だけが聞こえる。
◆その瞳は本物か◆
とにかく逃げる。
どこが出口なのかも分からないけれどとにかく研究員達から逃げた。
だってつかまったら処分……つまり殺されてしまう。
そうなる前に此処から逃げなければ。
見渡す限り白。白い廊下がただただ続いている。
あっちからもこっちからも研究員の足音が聞こえてきてどうにかなってしまいそうだった。
十字路の先、一人の少年とであった。少年といっても、僕とほとんど変わらないけれど。
少年は不思議そうにこちらを見る。けれど本当にこっちを見ているのか分からない。
前髪から覗く赤い目がチラチラと見えるだけ。
僕は、その少年に問う。
「出口はどこですか?」
少年は、無表情のまま
「そこ」
とだけ。
少年が指差したほうにも、まだ白い廊下が続いていた。
けれど、僕は何故かそれを信じてそっちに走った。
研究員の足音は、もうほとんど聞こえない。
ちょうどそのころ、さっきの少年は研究員と話をしていた。
「やあ、この少年を見なかったかい?」
「見ました。向こうに走っていきました」
少年はみたままのことを言う。
そして、その少年は気づいてしまった。
少年が指差した方向に向かっていく研究員みなが、武器を持っていたことを。
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