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夜の空は輝きを失ったように月も星もなく、いつものように暗雲だけで覆い尽されている。
その夜空の下。
嘆く女性と一人の少年が、呪印の施されている魔法陣の砂地に佇んでいた。
「ごめ…っ、こんな…こんな母さんを許して…っ」
少年の手にすがりつき、溢れ続ける涙を流す。
「――母さんのせいじゃないよ」
母親の手を取り、自分の両手で包み込んで笑ってみせた。今出来る、精一杯の笑顔。
「だって…この村を守るためには、誰かが犠牲にならなきゃいけないんだからさ」
そう言って顔を上げ、少し離れた場所にある産まれ育った小さな村を見つめた。
遠目ではあるが、それでも一つ一つを記憶に刻み込む為にゆっくりと見ていく。
「…ねぇ、母さん」
「ん?」
再び視線を母親と合わせて、今一番気掛かりな事を聞いてみる事にした。
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