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「…ミイルはここには来ないんだよね?」
「――…ええ」
「良かった…」
安堵の溜め息が零れる。
ミイルに…唯一の弟に、自分の最期なんて見せたくなかった。
だから、ミイルが此処には来ないと聞いて安心したのだ。
―――…チ…ト…タマ、シイ
「――母さん。そろそろ離れた方がいい」
「まっ…」
抱きつこうとした母親を魔法陣の外へ突き飛ばす。
“ごめんね”と呟いてから天空を見上げた。
――エモノハ……ドコダァ
「…っ。獲物は、ここにいる!」
そう天に向かって声を張り上げる。その瞬間――
ドォォン!!
突然の地響きをたてる程の雷と共に、辺りが見えないくらいの砂埃りが一面に舞った。
「――こんばんは」
透き通るような低い男性の声。
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