6人が本棚に入れています
本棚に追加
少年が死んでから数日が経とうとしていた。少年の事は何故か連続誘拐犯自殺と報道。何故か…………いや、刑事には分かっていた。本庁がプライドの為、虐待の件を隠匿したという事くらい。そして、自分には紙に書かれた住所をプライベートで尋ねる事しか出来ない事を。
だから、刑事は来ていた。住所が示す場所まで。
そこには普通の一軒家が建っているだけ。そして、驚く事に自分が勤務してる所轄内だったのだ。
まさか、この家の子も虐待にあっているのか?
そんな考えが刑事の脳裏を過る。しかし、インターホンを押す事が出来ない。令状がある訳でも無く、まして今は刑事では無いのだから。だけど少年は死に自分は家まで来ている。
刑事としての正義感がそうさせたのか…………いや、刑事はただ少年が死んだ時の顔が頭から記憶から放れないのだ。忘れたい。許されたい。だから、刑事は唾を飲み込みながらインターホンを押した。どうするかなどといった考えがあった訳ではない。ただ、自然と押していた。
すると、中から女性の声が響く。
「どなたですか?」
それを聞いた瞬間、刑事は焦る。面識がある訳ではない為、本名は名乗れない。しかし、今は刑事でもない。
「どうする」
そんな考えが脳裏を駆け巡る。応答がない為か再び中から声がした。
「どなたですか?」
それでも返事は無く、遂に女性は不振に思ったのか
「誰なんですか?警察呼びますよ」
と少々、怒り混じりに言う。慌てた刑事は咄嗟に
「あっ、スミマセン。実は私〇〇署の者です。実は警察手帳を探してもないので慌ててしまい」
と警察手帳を掲げながら伝える。
女性は怪しみながらも警察手帳を所持していた為か扉を開けながら
「何の用ですか」
とイラつきながら言う
最初のコメントを投稿しよう!