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刑事は、こうするしかなかったと自分に言い聞かせながら
「実は先日この近辺で傷害事件が起こりまして。少し前に起こった誘拐事件の事もございますので巡回と聞き回りを行っております。何か心あたりはございませんか」
とウソをつく。
いや、恐らく刑事は気付いていた。警察手帳を持ってきていた時点で警察の体制に疑問を持ちながらも刑事という事を利用していると。女性は未だ怪しみながら
「そんな事件聞いてないですケド本当にあったんですか?」
と単刀直入に聞いてくる。刑事は、もう腹を括るしかないと思いながら
「まだ誘拐事件の事であちこちバタバタしている為に伝わってなかったのでしょう」
とウソをウソでフォローする。実際は本庁の隠匿のお陰ですっかり昔の事件扱いだ。
「そうですか。だけど悪いですけど何も知りませんので」
と、女性は刑事を早々に帰そうとする。
刑事は、このままでは何も分からないどころか署に連絡される恐れがあると思い始めていた。しかし、何も分からないと言われればどうする事も出来ない。
当然刑事は焦った。ただ、ひたすら「どうする」の文字が頭の中をグルグルと駆け巡る。
次の瞬間、男は女性宅に押し入っていた。
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