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私は今、新しく通った深海への鉄道を独り歩んでいる。暗く、先の見えない、奥底へと。
途中の駅で何人かと合流した。その内の一人が私に話掛けてきた。
「あらあ、アナタも?」
綺麗な女だった。心安らぐ、そんな女だった。私はなんだか初めて口を開く気がする。
「えぇ、せっかくですから。まあ、別にそんなに楽しみではないんですけどね」
こう返すと彼女は少し悲しそうな顔をした。何か、悪いことでも言っただろうか。
「実は、この鉄道の開発に私、この新しい線路の開発に関わっていたんです」
しまった、と思った。
「いやいや、何も別に悪気があったわけではないんですよ。それに、じゃあこれは今までの線路とは何か違うかもしれませんね」
下手な私の弁解に、彼女は優しい笑みを取り戻してくれた。ほっと一息、である。
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