第1話

4/11

6311人が本棚に入れています
本棚に追加
/167ページ
教室の前ドアの硝子から、このクラスの担任で腐れ縁の山本進治(やまもとしんじ)の姿が見えた。 「指導たんねぇんじゃねぇの?」 授業に使う教材を手に持ち、廊下に出た俺は進治に言う。 言われた進治は、まるで鳥の嘴のように口を尖らせた。 「開口1番に文句かよー」 「拗ねたフリしても気持ち悪いだけだっつうの」 「冷たっ!」 そんなやり取りをしていると、教室から 「なぁりな。俺のノート勘弁してくんねぇ?」 という声がした。 「全く昴は…」 「何だよ?」 「皆は分からなくても、俺には分かるんだぞ。お前の気持ちがそのポーカーフェイスから」 進治はそう言って教室に入って行った。 「あ?」 進治を目で追うと、教室では桐生に日野京介(ひのきょうすけ)が擦り寄っていた。  
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6311人が本棚に入れています
本棚に追加