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教室の前ドアの硝子から、このクラスの担任で腐れ縁の山本進治(やまもとしんじ)の姿が見えた。
「指導たんねぇんじゃねぇの?」
授業に使う教材を手に持ち、廊下に出た俺は進治に言う。
言われた進治は、まるで鳥の嘴のように口を尖らせた。
「開口1番に文句かよー」
「拗ねたフリしても気持ち悪いだけだっつうの」
「冷たっ!」
そんなやり取りをしていると、教室から
「なぁりな。俺のノート勘弁してくんねぇ?」
という声がした。
「全く昴は…」
「何だよ?」
「皆は分からなくても、俺には分かるんだぞ。お前の気持ちがそのポーカーフェイスから」
進治はそう言って教室に入って行った。
「あ?」
進治を目で追うと、教室では桐生に日野京介(ひのきょうすけ)が擦り寄っていた。
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