《弐》

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「でも、不思議なのはそれだけじゃないのよ。」 「「えっ!?」」 まだ変なことがあったのは悠斗も知らなかったらしく、俺達はハモって聞き返した。 「まだあるのか?」 「うん。襲われた人達は数十人もいるのに、その中で犯人の姿を見た人が1人もいないの。まるで幽霊にでも襲われているかのように、急に体に傷がついたんだって。それに、何で切られたのかもわからないらしいよ。悠斗君が言ったように、刃物には間違いないらしいけど…。凶器もまだ出てないし…。多分、それは犯人が持っているんだろうけどね。」 千嘉がこんなにも詳しいのは、警察官をしている伯父に聞いたらしい。そして、証拠なども何もでていないから、捜査のしようがないと伯父さんが言ってた。と付け加えた。 ガラッ 「おい、席に着けー!朝のHR始めるぞ~!」 「わっ、ヤベッ、先生来たッ!!」 話に夢中になり、時間を忘れていて席に着いていなかったので、先生が入ってきたのに驚き、千嘉と悠斗は慌てて席に戻っていった。 「え~、今日から新学期だ。皆ちゃんと勉強するように。それと、おそらく皆知っていると思うが、最近では物騒な事件が起きている。犯人がまだ捕まっていないそうだから、気を付けるように。それでは授業を始める。教科書の24ページを開いて。」 事件のことが皆の間でも噂になっているらしく、ザワつきながら授業が始まった。 俺は授業も聞かずにぼんやりと色んな事を考えていた。 (何だか俺の周りでは変な事ばかり起きるな…。) さっきの不可解な殺傷事件もだし、あの夢についてもだ。 それにしても、何で襲われた人達は誰も犯人の姿を見ていないんだ?数人ならまだしも、数十人も見ていないというのはおかしすぎる…… それにあの夢… あの声は誰だったんだ…?幼い女の子のような声だったが… どこかで聞いたことがあるような気がする。とても懐かしい感じがした……
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