無題

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無題

「あっちぃ…」 俺は忌々しい太陽を細目になりながらガンを付けながら水を飲んだ。水は胃を少しだけ冷やすと汗となりべったりと体にまとわり付いて、嫌な感覚だけを残す。 隣では同胞が頭から水をぶっかけて日射病にならないように必死になっていた。 「ここに来て何日になるよ?…」 同胞は肩に掛けていたライフルを手に取り、無残に粉々になった民家の壁に腰掛けながら俺に聞いた。 「さぁな…日にちなんて数えるの忘れちまったよ」 俺は苦笑いしながらたばこをくわえたが火を点ける気にはならなかった。 周りでは他の仲間達が日陰に隠れ暑さを逃れようとしていた。後ろでは戦車が止まっており日光により異様に熱気を放っていた。まさに目玉焼きを焼ける、そのようなベタなたとえがぴったりであった。 俺はその見慣れた光景をぼーっと眺めていた。 するとふっと俺の視界が遮られた。俺は驚いて視点をその遮った物体に向けた。 子供であった。 目は大きく、ショートカットの小麦色の肌をした可愛らしい少女であった。 「おじさん何しているの?」 少女はニカっと無邪気に笑いながら俺に聞いた。俺は少し呆気に取られ茫然としていた。 「おじさん?どうしたの?」 少女は首を傾げながら俺に聞いた。 「え?…あっ…いや…なんでもない…」 俺はそういうと腰をあげ尻の土を払った。 「よかった!」 そういうとまた少女は俺を見上げながらニカっと笑った。 「それで…どうしたんだ?」 俺は銃を肩に掛けながら俺に話し掛けた理由を聞いた。 ここの地区に住むものにとっては俺みたいな兵士は危惧するものに話し掛けるんだ、よほどの理由があると思ったからだ。 「何にもないよ!」 そう元気よく返事をした少女に俺はあっけを取られ、はぁ?と聞き返してしまった。 すると少女も首を傾げた。 いや…傾げたいのは俺のほうだ…。 「迷子じゃねぇのか?」 同胞が戸惑っている俺に向かってそう言った。 「迷子…には見えねぇが…」 「だがこのままここに居させるわけにもいかねぇだろ。」 そんなやりとりを少女は黙って見ていた。 すると少女は「えへへ」と笑い俺の足に抱きついてきた。 「どうやら…おまえ懐かれたみたいだなww」 同胞は笑いながら俺を見た。 すると俺の肩を叩きニヤ付いた。やめろ…ニヤ付くな…。 「まっそーいうことでその子は頼むわ」 「マジかよ…」
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