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「いやぁ、待たせてごめんね」
スタッフの現場掃除(セットの後片付けのこと)が始まると、入口でうなだれていた俺の元に一人の女性が近付いてきた。
彼女こそが今撮影されていた映像の監督である(内海さん)で、昨日このスタジオがある建物の入口に貼ってあった求人広告を見ていた俺に声をかけてきた人物、でもある。
「とりあえずココ空気悪いから事務所に行こうか」
言われるままスタジオを後にし、長く簡素な廊下を進んで事務所とやらへ。
目の前を行く内海さんの綺麗に切りそろえられた茶色いボブの髪が軽快に揺れている。
推定年齢は30代前半ぐらいだろうか。
ビシッとしたヒョウ柄のスーツと派手目の化粧は水商売の女を連想させた。監督だとは聞いていたけど、この人があんな映像を撮っているなんて予想だにしなかった。
「司くんだったよね?」
「は、はい!高瀬 司です」
「どうだった?さっきの撮影。ちょっとは興奮してくれた?」
内海さんは振り返りもせず、とんでもない質問をサラリと言ってのけた。
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