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「ハル……明日会わせたい人がいるんだ……」
晩御飯の最中に、突然父が真剣な顔でそう言ってきた。
「えっ……えーと、それって……」
「結婚を考えてる人がいるんだ」
「ふーん」
私は適当に返事をして、残りのご飯を口にかきこむ。
「新しいお兄ちゃんもできるんだぞ。良かったな、ハル」
「まっ、父さんの好きにしなよ。ごちそうさま」
私は話しは終わりとばかりに立ち上がると、食器を下げて、足早に部屋に向かった。
正直再婚なんてしてほしくない。
母がなくなって12年。
「父さんは母さんの事、もう忘れちゃったのかな……」
母は私が5歳の頃、交通事故で亡くなった。
あまりに突然すぎた死。
初めてみた死体は……ただ眠っているようだった。
あーっっ!!
こんな湿っぽい事思い出すんじゃなかった!!
暗い気分になってきちゃったよ……
こんな時は漫画でも読んで現実逃避しよう。
床に無造作に散らばっている本の中から、適当に取る。
偶然にもその漫画の内容は、親が再婚して義理のお兄さんができるのだが、その兄が凄いイケメンだという話。
義兄と義妹の禁断の恋愛話。
「そういえば、私にもお兄さんができるって言ってたなぁ……凄いイケメンならいいのに。ってあるわけないない。漫画じゃあるまいし……」
とか言いながら、妄想してみたりする。
再婚は嫌だという思いはどこへやら……。
ハル 17歳。
乙女の妄想で、頭はイッパイだった。
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