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「よぉ!こんな夜遅くに奇遇だな、桜夜」
「~~~っ‼東光兄さん」
桜夜は思わずその場にへたり込んだ。恨みがましく上を見上げる。
そこに立っていたのは、日織の五つ年上の兄である凪海東光(ナギミハルミ)だった。
「久しぶりじゃねぇか。元気にしてたか?」
巨大なリュックと両肩に吊った(こちらもかなり大きな)ボストンバッグを軽く揺すった東光は桜夜の様子を見て顔をしかめた。
「この寒ぃのによくもまあ、そんな格好で雪の上に座ってられんなぁ」
ほら。そういいながら差し出され立てに捕まって立ち上がりながら、桜夜は思った。
(つーか、こうなったのって東光兄さんのせい何だけどなぁ…)
「んで、桜夜はいったい家の前で何を…っ!」
突然東光が言葉を切った。桜夜の顔をとっくりと眺める。
「そのけが、どうした?」
「えっ…」
驚いた桜夜の口から間の抜けた声が漏れる。
「な、何のこと?」
声がうわずった桜夜に、東光は低く言った。
「誤魔化すな、桜夜」
「だ、だからっ‼よくわからないよ、東光兄さん」
自分でも、何故そう言ったのかはよくわからなかった。本当は東光が言ったことはよくわかっていたけれど、何故か誤魔化さなくてはいけないような気がした。
「その頬の切り傷。ごっつい指輪した奴に殴られたりするとつくもんだ。ほかにもけがしてるよな?……いったい、誰にやられた」
桜夜は黙って首を横に振った。
「……」
黙って桜夜を見下ろしていた東光は、やがてため息をついた。
「とりあえず、家にこい」
東光は問答無用とばかりに桜夜を凪海家のリビングに連行した。
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