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「お湯、ありがとうございました」
桜夜(サクヤ)がそう言いながらリビングに入っていくと、額をつきあわせていた叔父一家が顔を上げた。
「桜夜ちゃん、この後どうするの?」
叔母に唐突に聞かれ、一瞬戸惑ったものの、桜夜はすぐに答えた。
「海外に行きます。もう、うちに帰れませんから」
「じゃあ、家で暮らしなさいな」
「はぃ?」
「今、話し合ってたの。桜夜ちゃんさえ良ければって、なったの。どうかしら?」
がっしりと手を捕まれ、ぶんぶんと振り回される。
桜夜は叔母の顔を眺めた。にこにこしながら、返事を待っていてくれる。
(ここにいさせてもらおうかな…)
お湯の中で考えていたことが頭を巡った。
優しくここにいて良いと言ってくれる叔母の顔を見ていたら、不意に目頭が熱くなって、涙がこぼれてきた。
「うぅ…ひっく…」
「よしよし」
叔母の手が頭をなでてくれた。涙が後から後から流れてきた。
「こ・ここに……。ここに、いさせて…下さい……っ!」
「うんうん。好きなだけいなさい」
叔母の言葉や、いつの間にか側にきて、大きな手で頭を撫でてくれる叔父に安心して、私は眠りに落ちた。
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