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とある世界の、とある国、その国のとある町の外れの孤児院に少女かと見間違えるくらいの少年がいた。
少年の名は生芽 蔵人(ウガ クロウド)
少年は…
いや、蔵人は捨て子だったわけでもなく、戦災孤児と言うわけでもなかったが、物心付く頃にはすでに親はいなかった。手っ取り早く言うならば、死別したらしい。
親以外に身内はいなかったので必然的に、この施設に住むことになったわけだが、蔵人に不満や寂しさはなかった。
「これなら家族に困ることはないな。」
彼が最初に発した言葉はそれだった。
院長は、それはどういうことだね?と尋ねると…
「ここでは施設の皆が家族なんでしょ?
だったら、寂しくて困ることはないだろうなって…」
蔵人はそう言って綺麗にそれでいて儚げに笑った。
この時、蔵人は7歳…
彼の人生が狂う前の"普通"だった頃のこと
ほんの10年前のことである。
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