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あの吉原の一件から神威は多々、万事屋に足を運んでいた。最初は警戒していた銀時と神楽だったが、何度か来るうちに神楽に会いに来ているだけだと分かり、銀時も今ではすっかりあの調子だ。
兄ちゃんが会いに来てくれるのは
嬉しいアル…
嬉しいんだけど…
急にいなくなったくせに、ふと再開したからといって、はいそうですかとすぐに受け入れられる訳もなく、神楽の心中は複雑な訳で…。しかもさっきのようにスキンシップが激しいのだ。
銀ちゃんは「神威も寂しかったんだろ」って言うけど…
なんだかなあ…
神楽はまだはっきりとは覚醒していない頭を大き振りかぶり、ぺちんと頬を叩くと銀時と神威がいる部屋へと向かった。
「あああー――っ!!!」
「うるさいよ、神楽」
神楽は目の前の光景に思わず叫んだ。なんと神威はこれでもかと言うほどにご飯を山盛りにして食べていた。
神楽は急いでお釜に駆け寄り、中を確認する。
「お…っ、おかわり出来ないアル…」
神楽はがっくりと肩を落とし、恨めしそうに神威を睨み付ける。
「しゃーねェだろ、神楽。まさか今日もコイツが来るなんて思ってなかったからよ、普通どうりにしか炊いてねェんだから」
銀時は最後のご飯を神楽の茶碗によそい、神楽に渡す。
「ん~、美味い美味い」
神威は掻き込むようにご飯を食べる。
くっそー、コイツさえ来なければ…っ
ほんの少しの仕返し、と神楽は神威の卵焼きを摘まもうとすると、神威はそれを見逃すはずもなく、自分の分はもちろん、神楽の分まで食べた。
「うがあー―っ!!!」
「人を呪わば穴二つってネ。いやー、昔の人は上手いこと言ったもんだ」
神威はケラケラと笑う。そんな神威に神楽はまた怒りだす。銀時は溜め息をつきながらも微笑ましい光景を静かに見守った。
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