序.早朝

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     四六時中作動しているコーヒーメーカーの中身は残り少なく、砂糖の瓶も底が見える。  テーブルの上には封を開けて間もない袋入りの食パンとカップに並々注がれたコーヒー、それとできたての目玉焼きが置かれている。  たった今、卓上に野菜たっぷりのサラダが用意された。  小洒落たナイフとフォークも到着し、朝の小さな宴の準備は調った。  ―それはごく当たり前、毎日のことだった。  それこそ一年三六五日。  食事の中身は毎日違うけれど、情景(シチュエーション)としてはそれほど変わらない。  …でも、今日は違った。  机の上に、真新しい写真立てがさりげなく置かれていた。  そこから、その日のすべてが始まった。  
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