116人が本棚に入れています
本棚に追加
すると、戸が開く音が
した。
「長政様、お市様。
茶をもってまいりました。」
さっき茶をもってくる
と言って出て行った
あゆが立っていた。
「あら、あゆ。
遅かったですね。
茶をきらしたのですか?」
さっきまでの出来事が
嘘のように冷静に装う。
「さっきからお部屋の
前にいたのですが…
長政様とお市様がいい
雰囲気だったので。」
にやけながらあゆは
言った。
「…」
あゆの言葉に長政と
お市は顔を見合わせて
顔を赤らめる。
「では私は失礼します。
今日はお楽しみくださいませ。」
あゆは茶をおくと
急いで部屋を出た。
あゆがいなくなると
部屋に沈黙が流れる。
「市…ありがとう。」
「え?」
長政のいきなりの言葉
にお市は驚く。
「いつもありがとう。」
「長政様、なんかお別れ
みたいですよ…」
長政様、どうなさった
のですか?
と、聞きたかった。
けれどお市の口は
思うように動かない。
かえってくる言葉が
怖かった。
「市。勘違いしないで。
これからもよろしくね
って意味だよ。」
長政は笑って髪飾り
を触った。
最初のコメントを投稿しよう!