結婚記念日

4/10
前へ
/206ページ
次へ
「喉が乾きませぬか? 今茶をもってきまする」 「ありがとう。」 あゆの後ろ姿を 見つめながら言った。 あゆがいなくなった後 部屋には静けさがます。 「長政様…どこにいるの?」 お市の瞳からは 一筋の雫がこぼれた。 「やだ…とまらない」 もう私の事なんて どうでもいいのだろうか? 長政様… 「戻ってきて…!」 お市はうつむきながら 静かに呟いた。 すると、廊下から こちらへ走ってくる 足音が聞こえてきた。 「今日はいつもより 騒がしいですね…」 そしてお市の部屋の 戸をたたく音がした。 「どうぞ。」 お市は涙を拭い、 髪をととのえた。 カタン、と戸が 開く音がした。 戸のほうをみると… ずっと会いたかった 愛しい彼が立っていた。
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

116人が本棚に入れています
本棚に追加