結婚記念日

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「長政…様?」 お市の瞳には、 さらに涙があふれる。 「市!?なぜそんなに 泣いているんだ!?」 長政は慌てて お市に駆け寄る。 「いえ…なんでも ないんです。」 お市は精一杯の 作り笑顔でこたえた。 長政はすこしだまって しゃがみこみながら 言った。 「嘘。市は某に何かある といつも作り笑顔で こたえてくる。」 長政は微笑みながら、 お市の頭をなでた。 …そうなのか。 私の嘘はすべて 長政様にわかるのか。 お市は彼の手を 握りながら言った。 「今日が何の日か 覚えていますか?」 長政は笑った。 「当たり前だろう。 今日は某と市が 結ばれた日だね。」 彼の笑顔は自分の 不安を取り除いて くれる。 お市は一度でも長政を 疑った事を後悔した。
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