結婚記念日

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「ああ…これを買いに いっていたんだ。」 長政は思いだしたよう に懐からそれをだす。 「…可愛い!」 それはお市と長政の 思い出深い花、 藤の花ににせた 髪飾りだった。 「つけてあげる。 おいで。」 長政は手招きをする。 お市は長政にちかづき 頭を傾けた。 シャラン、と金具が ぶつかりあう心地よい 音が聞こえてくる。 「…できた。」 長政はにっこりと 笑ってお市を抱き締めた。 「長政様…ありがとう ございます。」 「大事な市のためさ。 礼なんていらないよ。」 お市は気付いた。 「…長政様。」 「なんだい?」 「私…何も買ってない です。ごめんなさい!」
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