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洗面所に行くと、沙羽は扉越しに、浴室でシャワーを浴びている男に声をかけた。
「服、洗濯して乾燥させるから。代わりに着るものをここに置くので、良かったら着てみて。」
「…すまない。助かる。」
男の返事を確認すると、沙羽は目の前にあるドラム式の洗濯機に男の着ていた服を全部入れると、洗剤を投げ入れスイッチを入れた。
まさか、こんな出会いがあるなんて。と浮かれて鼻歌を歌いながらキッチンに向かうとお湯を沸かし始めた沙羽。
食器棚からは、長い間使われる事のなかったペアのマグカップが出されていて、それを眺める沙羽が、思わずふふふと笑い声を漏らした。
暫くすると、浴室の扉が開閉する音がして、沙羽が用意した男性用の部屋着を着た男が、スリッパの音を立てながら戻ってきた。
足が痛むのか、男は先ほど痛めた左足を擦りながら歩いていた。
「大丈夫…ですか?」
沙羽が心配そうに男に尋ねると、「こっちに座って!」とソファーに座る様促した。
テーブルの上に用意した冷却スプレーを手に取ると、そのスプレーの缶を上下にカチカチと音を鳴らして振り出した沙羽。
男は、手当をしてくれるのかと言われる儘にソファーに座って缶を振る沙羽を見上げると、玄関のゴミの山を見た時はやっぱりとんでもない女だと思った男だったのだが、浴室もそうだった様に、以外と掃除が行き届いていて、散らかった所もなく、整理整頓されている部屋の様子に、掃除は真面に出来る女なんだなと男は思った。
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