行き摩りの?

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この女の部屋に男物の服があるなんて意外だ。一体、こんな物好きな男ってのはどんな男なんだろうか。男にそう思われながら見つめられてる事も気付けない沙羽は、ソファーに座って此方を見上げるその男に、胸をときめかされていた。 「痛むのはどこ?」 そう言うと、男は左足の裾を上げた。 「この辺りが…」 沙羽は男のそばに膝をついて座ると、指を差された辺りをみた。 切り傷などに寄る出血はない様だったが、男が指を差した脛の内側は少し腫れ上がり、自転車の後だろうか、一部には紫色に変色していて内出血しているのが分かった。 「あぁ、痛そう…。」 よく見る為に顔を近づけた沙羽は、男の膝に手を当てた。 男が黙ってそんな沙羽を眺めていると、沙羽は顔を上げて、「湿布の方が良さそうですね」と言うと、テーブルにある湿布を手に取り患部に貼った。 「左の腕はどうですか?」 そう聞いた沙羽に、男は「こっちの方はそこまで酷くない」と言ったので、その腕の肘の辺りには冷却スプレーを吹きかけた。 「明日、ちゃんと病院で診てもらって下さいね。あ、飲み物用意するけど、何がいいですか?こんな時間だけど、紅茶かコーヒーか、それとも緑茶か、あ、ほうじ茶もありますよ!どれがいいですか?」 男を見上げる様にしてそう言うと、沙羽は立ち上がり救急箱を片付けた。 「じゃあ、そのほうじ茶で。」 沙羽に向かってそう答えると、手当も普通に出来る女なんだなと思いながら、一連の流れを眺めていた男は、ベランダの向こうで降りしきる雨を眺め顔を顰めると暫くして俯いた。
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