行き摩りの?

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男はそんな沙羽を見て、「ふーん。ま、いいや。興味ない。どっちでも関係ないし。」と呟いた。 『興味ない』 男にそう言われて、沙羽は膝の上の拳に力を入れると俯いたまま動けなくなった。 以前付き合ってた男に言われた言葉だった。正確には、そう友人と話す所を、偶然目撃してしまったのだ。 『興味ないなんて、それじゃあ、どうして付き合ってるの?』 『うーん、つなぎで、かな。』 そんな昔の男の記憶が蘇ってきた。 固まって動かなくなった沙羽に気付いたその男は、マグカップを置いて沙羽の顔を覗き込んだ。 顔を赤くして、目に涙を溜めていた沙羽。 「まさか、…興味ないって言われたから、泣いてんの?」 「え?」 その声で我に返った沙羽は、顔を上げて「まさか、そんな、違うから。」と、勢いを付けて立ち上がろうとした。 が、男に腕を掴まれて、立ち上がる時につけた勢いの弾みでバランスを崩してしまうと、男に覆う様な体勢でソファーに倒れこんでしまった。 男の顔に沙羽の柔らかい髪がかかる。 沙羽は体勢を起こそうとすると、男が「本当に?」と、目を細めて沙羽を見上げた。 「え!」 二人の顔は、お互いの息が感じられる程近い。沙羽にどういう事なのかと考える間を与えないかの如く、男の腕は沙羽の背中と腰に回された。 「だって、誘ってたでしょ。最初から。」 沙羽を見上げてそう言うと、疲れからなのか声に力が入らなかった男だが、そんな事もその男にはどうでも良かった。 だが、そんな力のないその男の声が、沙羽の耳に甘く囁いた様に聞こえて。 ソファーに突いている沙羽の片方の膝はと言えば、男の股座にあるし、沙羽はその男の太ももに跨っていて、その男の太ももに触れている自分の太ももの内側と、そして、背中と腰に回されたその男の手の温もりに沙羽の意識は持っていかれた。 胸の鼓動は激しく高鳴るばかりだ。 我慢が出来なかったのは、沙羽の方だった。 「うん。」 そう頷くと、沙羽は唇を重ねていった。 頷いた沙羽に呆れはしたものの、それもこれも、どれも、その男にはどうでも良かったのだ。 とにかく、この一日で疲れたこの疲労感を、罪の意識を、後悔や、恨みや、悲しみ、怒りを、どうにか紛らわせたかった。 沙羽が息を切らして唇を話すと、男はゆっくりと体勢を変えて、沙羽に覆い被さった。
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