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仕方なく昨日、帰省の為に母親の静枝に迎えに来てもらった時、ゴミ袋の幾つかと一緒に帰省して、実家のこの地域では今日が可燃ゴミの収集日だという事だったので、捨ててもらう事にしたのだ。
きっと聡がそれを知れば、「ゴミと一緒に帰ってくるバカな娘が一体どこにいるって言うんだー!」なんて言うに決まってる。そう思うと、ゴミが見つかりません様にと、手に汗を握りながら祈るしかなかった。
「…………今日、帰るのか。」
荷物を詰め終えた聡が、沙羽に向かって訪ねてきた。
「うん、明日仕事だからね~。」
「そっか。」
そう言った聡は、何だか少し残念そうに見えた。
そんな父親を見兼ねた沙羽は「お父さん」と聡を呼ぶと、「あんまり無理しないでね…」と続けた。
父親の仕事が危険な仕事だって事くらい、理解している。まして今回の様な大きな事件になると、なかなか休みも難しい。父親の性格上、休みがあってもそれを利用して捜査に出掛けてしまうのだ。
『家族、子供、そして未来の孫達、ひ孫達が、安心して住める世の中にしていく為にも、俺らが頑張れる時に頑張らないと』
それが聡の口癖だった。
「沙羽も、無理はするなよ。」
聡はそう言うと、「じゃあ、行ってくるよ」と踵を返そうとした。
ところが。
「ただいまー。ほら沙羽、足りなかったゴミ袋買ってきたから、これに移して頂戴。あなたのゴミ袋じゃこの街では出せないから。」
そう言って買い物から帰って来た静枝が、沙羽と一緒に帰省してきたゴミ袋を高らかに持ち上げてリビングルームに入ってきた。
「なんだそれは…。どういう事だ?」
「あら…」
静枝は言葉を詰まらせた。
沙羽は自分の頭頂部から一気に血の気が引いていくのを自覚して、徐ろに毛布を被って丸まった。
次に聡の口から出たのは、沙羽が恐れていた怒号のそれだった。
「ゴミと一緒に帰ってくる奴があるかー!!」
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