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「パパ、まだ帰ってこないのかなぁ~…」
一人家の庭の草を毟りながら、少女は呟く。
そして草を山のように積みながら、溜息をついてゴロリとその場に転がる。
「おぉーーい」
ふと、寝転がっている少女に何者かが声をかけた。
少女は、この声の主が分かってはいるが、姿は一度も見た事がない。
いや、この声の主はおろか、花の姿形も、空に浮かぶ雲の形も見た事がない…
少女は盲人だった。
「ヤマツカミさんじゃない。どうしたの?」
体を起こして声の主の方を向く少女。
長い銀髪を後ろでに括る、所謂ポニーテイルに白に近い濁った灰色の目…
袖なしの背中に八卦模様のある黒いシャツに紺のショートパンツ。
ショートパンツの右ポケットには何故か放射能マークがプリントされてある。
ヤマツカミと呼ばれた蛸のようなものは「ぐへへ」と奇妙な笑い声をあげながら、少女から30m離れた所で口を開く。
ただの巨大な緑蛸の癖に器用に正座をし、前に<何かやらかした>事を思い出してか、少し緊張したような顔をしていた。
「いやねぇ、今日で華燐ちゃんも18じゃん?パパとママがいる所に行きたくなぁい?って言おうと思ってね」
けたけたと緊張しているのを隠し、愉快そうに笑いながら何処からかスペルカードを取り出すヤマツカミ。
ヤマツカミの言葉を聞いて、華燐と呼ばれた少女は少し考える。
「ん?パパとママがいる所ってのは魅力的ね…幻想郷…だっけ?」
幻想郷…華燐の父親と母親から度々耳にしていた地名だ。と華燐は自分の記憶を辿る。
何でも、自然が沢山あって田舎のような所だとか。
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