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まだ意識はある。でも死ぬんだろうなぁ‥。
そんなことを思いながら、吸い込まれる感覚がある方向をゆっくり見た。
右手‥‥右手だ。
右手からどんどん吸い込まれてるような‥。
右手の方には、新選組の本があった。
風の力でパラパラとページがめくられている。
あーあ。まだまだ新選組の勉強したかったな。
一度くらい、彼氏作って舞ちゃんと優香と恋バナしたらよかったな。
私の人生は、こんなにも呆気ない終わり方なんだ。
なんてつまらない終わり方。
「誠‥‥?ちょっ誠!?私のこと見えてる!?誠っ誠ってば!!」
ありったけの声で叫ぶ優香。
遠くの方から聞こえる、救急車のサイレンの音。
それと複数の足音が近づいてくる。
死ぬってこんな感じなんだ。
なんとなく死ぬことがわかるんだ。
あぁ、いい人生だったなぁって気持ちよりも、あの時ああしとけば‥って気持ちが大きい。
「‥田!神田!!もうすぐ救急車が来るからな、もう少しの辛抱だ!!」
日本史の先生の声。
先生ごめん‥。もっと先生と新選組のクイズ出し合いたかったよ。
お父さんお母さんごめんね。なんか私、先に死ぬみたいだ。
舞ちゃん、優香‥‥。
私まだ、二人といっぱい話したいよ。笑いたかったよ。
私は吸い込まれる感覚に囚われたまま、目を閉じた。
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