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しかし、聞いたところで誰か答えてくれるわけではなく、ただ風だけが悲しく吹いていくだけだ。
引っ越してきて三年とは言っても、ほとんどの時間を仕事に使っていたため、全く見覚えのないところだった。
見えるとしたら、もう誰も住んでないだろう小さな神社だけだ。
「困ったなぁ・・・どうにかして戻らないと・・・」
家に帰ってやらなければならないことがたくさんある。
しかし何処を向いてもただ草むらがあるばかりだ。
このままでは家に帰るどころか野宿することになってしまう。
そこまで考えて青くなったその時、
チリ・・・ン・・・・・
何処からか鈴の音が聞こえた。
「・・・・え?」
慌てて耳をすます。
すると、
チリーン・・・・・
音のしたほうへ目を向けると、神社の賽銭箱の裏に、一匹の黒猫がいた。
音は、その猫が付けている首輪から鳴っていた。
「貴方、野良・・・・なわけないか。首輪付けてるものね。じゃあ、どこの飼い猫かしら。」
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