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薬缶がピーピーと喧しく悲鳴をあげる。
『熱い熱い、早く火を止めておくれ!』
何だかそう言っているように感じた。
薬缶の注文に応えるべく、コンロの火をとめ薬缶を救出する。
ドリップの中に敷き詰められた、芳ばしい香りを放つそれに、薬缶が命懸けであたためてくれた湯を注ぐ。
こんなにゆったりと珈琲の香りを堪能できるのは、私の早起き癖のおかげ。
そう思うと、おばあちゃんみたいなこの習慣も悪くない気がする。
……朝が早い分、夜眠くなるのも早く、好きなテレビ番組が見られないのがネックではあるけれど。
だがそんな悩みは、私の本当の悩みに比べれば屁の河童だ。
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