地震…①

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その頃は実家にいたので いつものように 地震のニュースを見ながらゴロゴロしていた そして電話が鳴る 母が最初に出て代わった 『よう、元気か?』 電話の向こうからはバリトンの懐かしい声が聞こえた 「あんた生きてたのかい」 中学の同級生の淳くん 『生きてたって、そりゃ酷い言われようだな』 「ていうか、あんたしばらく音信不通でどこにいるのさ」 淳は少し押し黙りいった 『神戸さ』 「神戸って地震…」 そこまで言って気がついた 奴は自衛隊にいて 災害派遣を要請されて 知事が承諾したんだっけ そのメンバーの中に淳がいたとは 「被害はどうなの?」 『テレビで見てるだろう それと変わらんよ』 「あんたはどうなの」 『オレ?何も』 「そうかい。それならよかった」 『おっと金が切れそうだ そんなにしないうちに帰れる予定だから 土産買ってきてやるから期待してな』 その頃はまだ携帯電話もなく公衆電話の時代である 多分彼の後ろには長い列ができていただろう 早口で言った 「ばいばい」 『じゃあな』 そして電話は切れた 天災の怖さはよく知っている そんなに近いところに兵庫県に 縁があったとは思わなかった
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