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その聞き覚えのある、忘れたくても忘れられなかった声に、ありえないと思いつつも心の片隅にまだ残っていた期待にも似た気持ちが出てくる。
そしてその大きくなる想いに耐え切れず音源を辿るように視線を後ろに向けると、そこには先程までずっと想い馳せていた藍染とギンが佇んでいた。
本来なら一護は、感動の再会という情景をその身で現したかもしれない。しかし、そうはならなかった。
なぜなら、二人の顔には一護が抱いた喜びなどどこにもなく、逆に怒りの表情が浮かべられていたのだ。
(二人とも、凄く怒ってる…)
二人から発せられる霊圧は極寒のように冷たく、その冷たさに恐怖して何もいえない一護に、先に動いたのは藍染だった。
――パシッ!!
「っ…!」
「…何を、しようとしていたんだい?」
動いた藍染の速さに目が追いつけず、気付いた時には一護は頬を思いっきり叩かれていて、弱ったその躯は重力に逆らえず地面に伏せる。
確かな痛みと口腔に広がる鉄の味に、これは夢ではないんだと教えられ、一護は断罪を含んだ瞳で見下ろす藍染とギンを見上げた。
見上げた琥珀の瞳に映るのは、怒気を纏う自分にとってこの上なく愛しい二人。その二人は普段は甘やかし過ぎだと思うほど甘やかす癖に、咎める時には一切の容赦がない事を、一護は知っている。
だから、怒気を纏った目の前の二人に畏怖する事は当然なのだが、何故かその畏怖は次の瞬間消えうせる。
「…聞こえなかったのかな?私は、何をしていたのかと聞いているんだよ、一護」
「黙秘権は与えへんよ、いっちゃん」
「…ぁ」
なぜなら二人が言葉を紡ぐときに見せた自分だけが知っている“癖”が、何を意味しているかを知っていたからだ。
(…どんなに怒ってても、俺の名前呼ぶ時だけ優しくなる所…変わってない)
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