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それが今回の事で嫌と言うほどに解った一護は藍染の手を握り締めながら、一番聞きたくて聞けなかった事を言葉にした。
「なんで、なんで俺を…」
「捨ててへんよ」
「…ぇ?」
しかし最後まで言い切る前に、今まで静観していたギンが答えを導き出す。一護が予想していた答えとは全く別の、答えを。
だからだろうか、一護は鳩が豆鉄砲を食らったような表情のまま頭の上に?マークを乱舞させ、ギンをじっと見つめたまま固まる。
その何とも幼くて可愛らしい様子を、ギンはくすくすと愉しげな笑みを零しながら見つめていたが、ギン以外にも事の真相を知っている藍染は、ギンとは対照的に溜め息をついた。
「ほら見なさい、ギン。やはり誤解しているじゃないか」
「せやかてボクの言うた通り、いっちゃんの意外な一面見れましたやん」
「……」
頭上で交わされる二人の会話。片方は飽きれ、片方は喜々としているその会話に、元々頭がいい一護は自分自身で答えを導き出した。
そう、今回の事全てが巧妙に仕組まれた“猿芝居”だったと言う答えを。
(俺…捨てられた訳じゃなかったのか)
恐らく普通ならば怒りを露にし二人を怒鳴りつける…ぐらいはしても罰は当たらないと思うのだが、やはり一護は今回の事で二人の大切さを見に染みて痛感しているせいか、一護から溢れたモノは怒りや言葉ではなく安堵の涙だった。
「っ…ふっ…」
「あぁっ、いっちゃんゴメンな?泣かんといてや」
ポロポロと大粒の涙を流し愈(いよいよ)本気で泣き始めた一護に、さすがのギンも罪悪感を感じ始めたのか、震える一護の躯を抱きしめ優しくあやす。
(…あったかい)
ふわりと包み込み躯も心も温かくなるその腕の温もりに、一護は縋るようにぎゅっとギンの服を掴み愛しい人の温もりを感じていた。
勿論それと同時に藍染の手も握り締め、一護は漸く愛しい二人が此処に居るという現実を実感する。
そしてその実感した心に呼応するように躯もまた…、二人の愛しい恋人の全てを渇望していくのだった。
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