第二章

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「行こう。」 力強い返事が戻ってきた。 俺たちは、少し歪んだ廊下を渡り、破壊されたドア付近へと向かった。 地震はでかかった。 フローリングが歪み、気をつけながら策弥とリビングへと向かう。 十数年と暮らしてきた一軒家が、今日に限って別の物に見えた。 すぐそこのリビングが遠く感じた。 リビングに入る前に、先程通ってきた廊下を一瞥する。 見慣れた光景はそこにはなく、ただただ荒れていた。 俺が足を止めたことに気付かず、策弥はそのまま壊れたドアの横を通った。 俺もその後にゆっくりと続く。 予想以上に荷物が少なかったことに、おっさんたちは驚いていた。 「本当にそれで十分か?」なんて聞いてくる。 まるで、持っていけるものは全て持っていけ、って言われてる感覚だった。 「大丈夫だよ!元々物は少ないし、必要なものは全部入れたよ!」 笑顔で答える策弥。 けど、俺は笑顔にはなれなかった。 何かが引っ掛かる。 けど、何か分からない。 釈然としない俺を見た高松さんは、ゆっくりと近づいてきた。 「これ、カバンに入るかな?」 渡されたのは、写真立て。 そこには、おっさんと二人の男性が写っていた。 「多分。」と答え、それを受け取る。 そして、写真を見た。 モノクロの写真。 多分、この黒い服は学生服。 笑顔のおっさんが写っていた。 そして、左右にはおっさんの友人らしき人物。 その一人に、目が止まった。
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