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「行こう。」
力強い返事が戻ってきた。
俺たちは、少し歪んだ廊下を渡り、破壊されたドア付近へと向かった。
地震はでかかった。
フローリングが歪み、気をつけながら策弥とリビングへと向かう。
十数年と暮らしてきた一軒家が、今日に限って別の物に見えた。
すぐそこのリビングが遠く感じた。
リビングに入る前に、先程通ってきた廊下を一瞥する。
見慣れた光景はそこにはなく、ただただ荒れていた。
俺が足を止めたことに気付かず、策弥はそのまま壊れたドアの横を通った。
俺もその後にゆっくりと続く。
予想以上に荷物が少なかったことに、おっさんたちは驚いていた。
「本当にそれで十分か?」なんて聞いてくる。
まるで、持っていけるものは全て持っていけ、って言われてる感覚だった。
「大丈夫だよ!元々物は少ないし、必要なものは全部入れたよ!」
笑顔で答える策弥。
けど、俺は笑顔にはなれなかった。
何かが引っ掛かる。
けど、何か分からない。
釈然としない俺を見た高松さんは、ゆっくりと近づいてきた。
「これ、カバンに入るかな?」
渡されたのは、写真立て。
そこには、おっさんと二人の男性が写っていた。
「多分。」と答え、それを受け取る。
そして、写真を見た。
モノクロの写真。
多分、この黒い服は学生服。
笑顔のおっさんが写っていた。
そして、左右にはおっさんの友人らしき人物。
その一人に、目が止まった。
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