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その日は、いつも通りの日曜日だった。
学校もなく、家の手伝いも終わり、俺と策弥はオッサンからもらったラジカセを肩に乗せ、誰も通らない道へと歩いて行った。
海沿いの道に、二つの影法師が揺れる。
隣で歩く策弥はご機嫌なのか、鼻歌を歌っていた。
「ご機嫌だな。」とちょっと嫌みったらしく言うと、「まぁね。」と返ってきた。
「何たって、今日は快晴。絶好のダンス日よりじゃん!」
ニカッと音が聞こえそうな笑顔を、俺に見せた。
確かに。
本日は、日本晴。
海も穏やかで、海風も潮の匂いを運ぶが、いたって普通。
心地よかった。
ふと眼を閉じて、潮風を全身に浴びた。
ちょっとべたつくが、これがいい。
小さい頃から浴びてきた潮風だった。
ここ、青樹島は俺達のホーム。
人口約50人くらいの小さな島。
ここに、俺と策弥とオッサンが住んでいた。
そう、住んで「いた」。
未成年は、俺と策弥だけ。
俺達の次に若いのは、オッサン、守木章だった。
あとは全員、60過ぎ。
まさしく、高齢者社会だった。
そんな島を、俺と策弥は好きだった。
学校は一応あるが、生徒は俺ら二人。
友達はおじいさんやおばあさんだけ。
だけど、本当に好きだった。
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