第一章

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  俺たちは、趣味のダンスをしに、一通りの少ない海沿いの道へと二人で来たのだ。 家から数分後、練習場としている場所についた。 いつも通りの場所にラジカセを置き、馴れた手つきでボタンを押す。 カチッと乾いた音が鳴った。 「拓弥~、今日はどれ踊る?」 腕の筋を伸ばすストレッチをしながら、策弥は口を開いた。 Tシャツに短パン。 そして、ダンス練習用のシューズを履く策弥は、俺の弟。 俺が生まれた10分後にできた弟だ。 同じ顔、同じ背丈。 違う所と言ったら、ダークブラウンのふわふわした猫っ毛と少し低い声。 あと、身につける色とかかな。 紺や黒を好む俺に対して、策弥は赤など派手な色が好きだった。 そのため、身の回りの色も赤を中心にギラギラしている。 「とりあえず、この前教えてもらったやつを踊るか。」 「あ~、あれかぁ。ちょっとおさらいしてからじゃ駄目?サビ入る前のステップがちょっとずれるんだよね。」 「だろうな。」 「何だよ、その言い方!」 策弥はぷぅっと頬を膨らませた。 そんな策弥を見て、俺は肩をすくめる。 「まぁ、おさらいするから、ほら。」 俺はラジカセの一時停止を押した。 そして、策弥の隣に立つ。 誰も通らない道に、同じ長さの影法師が二つ。 カウントを取り、サビ前の部分を策弥と踊る。 隣で舞う策弥は、自分の足元を見て、確認を行っている。 そして、「あ。」と声をあげた。 どうやら、自分のミスに気づいたらしい。 パチンと手の平を合せ、もう一度さっきのところから、と俺にお願いしてきた。  
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