第一章

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  「うっし、じゃぁ、もう一回やるぞ。ワン、ツー、ワンツースリーフォー。」 合図とともに、同じ影が同じ動きをする。 そして、サビに入ったとたん、全くお互いにズレを感じることなく、無事サビ最後まで踊りきれた。 タイミングがそろったことに安心したのか、間奏で策弥は地面に座りこみ、そして、寝そべった。 エヘヘと笑みを浮かべる策弥を見て、俺も思わず口元が緩んだ。 「でーけたー!!!」 「お疲れ様。」 手の平を策弥に向ける。 そして、策弥が軽く手の平を叩いた。 パチンと乾いた音が響き渡る。 本当ならこのまま音楽を流して、全体通して踊りたいところだけど、今は八月、夏真っ盛り。 サビ前を確認しただけなのに、汗が止まらない。 俺もその場に座り込み、Tシャツで汗を拭った。 隣の策弥も、服で汗を拭い、海風を全身に浴びた。 潮っぽい風を浴びると、べたべた感が一層増すが、今は関係ない。 べたべた感より、涼しさが欲しい。 策弥は眼を瞑っていた。 ふと、海が揺れた。 それに気付いた俺は、眉を顰める。 「地震?」 答えはすぐに来た。 ぐらっと島全体が揺れる。 震度は分からない。 けど、結構大きかったのは分かった。 「拓弥、家に戻ろう!」 「あぁ!」 策弥は俺より早く起き上がり、一時停止のラジカセを持ちあげる。 そして、俺が立ちあがったのを確認すると、一目散に家へと走った。 俺は、その後を追いかける。  
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