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最近、地震が頻繁に起こる。
理由は分からない。
けど、本当によく起こる。
幸い、死人は出ないが、津波の被害は度々あった。
地震があったら、海から離れろ。
幼いころから、おっさんに言われて来た。
そして、今も守っている。
先を走る策弥の後を追い、見慣れた、走りなれた坂道を上がり、一軒家へとやってきた。
俺、策弥、そして、おっさんの三人の家だ。
白い壁に、赤い屋根。
色とりどりの花に囲まれた一軒家。
策弥はこの家が大好きだと言っていた。
色合いだろ、と言うと、
「ちげーよ。この家そのものが大好きなんだよ!」
と照れ臭そうに言ってたのを思い出す。
いいや、今、その場合じゃない。
俺は頭を左右に振る。
そして、前を見た。
「拓弥!」
策弥はドアを開け、俺に早く来いとジェスチャーする。
策弥は少しだけ、俺より足が速い。
さっきまで目と鼻の先にいた策弥は、数メートル先にいた。
俺は数秒遅れで玄関先へとたどりつく。
「おっさん、さっきの地震、でかくねー?」
「おっさーん?」
靴を脱ぎ、リビングへと進む。
いくら呼びかけても、おっさんは出てこない。
不思議に思いながらも、リビングの扉を開いた。
「やぁ、おかえり、拓、策。」
「おっさん!」
「って、え?誰、隣の人?」
おっさんに駆け寄ろうとした足がふと止まる。
お客さんと対面するのは、ほとんどない。
いつも、「部屋に戻ってくれないか?」と言われ、俺と策弥は毎回部屋で待機させられるからだ。
けど、今回は違うようだった。
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