第一章

6/8
前へ
/74ページ
次へ
  初めましてのお客様は、真夏にも関わらず、スーツだった。 ネクタイは少し緩めていたが、靴下は履いている。 策弥もそれに気付き、ふと渋い顔をした。 多分、「こいつ、暑い中、黒い靴下とか神すぎる。」とか思ってんだろうな。 下らない事を考えているだろう策弥を横目に、男性を見る。 木を基調とした家具に囲まれた黒いパンツを履いた男は、俺らにほほ笑んだ。 「初めまして、拓弥くん。策弥くん。高松翔太と言います。」 そういうと、男はぺこりを頭を下げた。 それにつられるかのように、俺と策弥も会釈する。 「守木拓弥です。」 「弟の策弥です。よろしくお願いします。」 「どうだ、可愛い息子だろ?」 おっさんは、嬉しそうに高松さんを見た。 「あぁ、そうだね、章にはもったいないくらいにな!」 「おまっ!相変わらず、容赦ないな!」 「ふふふ、章もな。」 どうやら、二人は昔馴染みのようだった。 あんな無邪気なおっさんを見るのは初めてで、俺と策弥は思わすガン見してしまった。 特に、策弥なんて口が開けっぱ。 だらしないな、お前は・・・。 呆れた顔をすると、コホンとおっさんが咳払いをした。 「まぁ、翔太は悪い奴じゃない。幼馴染ってところだな。」 「運悪くな。」 「悪友だな。」 お互いがふふと笑い合う。 そんなおっさんを見て、ふと、策弥が口を開いた。 「え?珍しくない?おっさんが知り合いを俺達に紹介するの。」 「まぁ、そうだな。部外者が来る時は、大抵お前ら二人を部屋で待機させてたしな。」 「今回は、何故?」 疑問を口に出す。 ふとした疑問。 されど、疑問。 本当に珍しいからだ。 おっさんが、俺達を島の人達以外に紹介するのは、今回が初めて。 俺も策弥も同じ顔で二人を見た。  
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4451人が本棚に入れています
本棚に追加