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ふと視界の端で影が揺れる。
おっさんだった。
策弥もおっさんに気付き、くるんと体をおっさんに向けた。
てか、なんか、策弥が犬に見える。
しっぽと犬耳が、見える、ような・・・・。
黄色のアロハシャツに短パン。
高松さんと違って、裸足のおっさんはそのまま顔を俺達の耳に近づけた。
「よっし、お前らご飯食べていないだろ?さっき作った昼飯が冷蔵庫の中にあるから。」
「え、それ、持ってこいって言ってんの?」
ぷく~と頬を膨らます策弥。
けど、目は嬉しそうだった。
まぁ、そうだろうな。
おっさんの飯は美味いし。
たま~に、料理を教えてもらっていたが、やはりおっさんには勝てなかった。
それは、策弥も同様。
何度もチャレンジするが、おっさんより美味しいご飯を作れたことは一回もなかった。
案外素直にリビングを出ようとする策弥の後を追った。
ちょっと特殊な一軒家のため、リビングを一旦出ないとキッチンにたどり着けない。
最初はキッチンとリビングの間に壁はなかったが、おっさんの趣味によって壁が誕生した。
おっさんは、リフォームが好きなのは知ってる。
俺たちは十何年とこの一軒家で過ごしてきたが、家の内装は毎年変わっていた。
幼いころ、策弥が部屋の変わりように泣きだしたこともあるくらい、相当変わっていた時もあった。
なんて、昔のことを思いながら、冷蔵庫に手をかけた。
「いいのか、章。」
「あぁ。もう、腹はくくってる。」
そんな会話がされているとは知らずに。
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