第一章

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  ふと視界の端で影が揺れる。 おっさんだった。 策弥もおっさんに気付き、くるんと体をおっさんに向けた。 てか、なんか、策弥が犬に見える。 しっぽと犬耳が、見える、ような・・・・。 黄色のアロハシャツに短パン。 高松さんと違って、裸足のおっさんはそのまま顔を俺達の耳に近づけた。 「よっし、お前らご飯食べていないだろ?さっき作った昼飯が冷蔵庫の中にあるから。」 「え、それ、持ってこいって言ってんの?」 ぷく~と頬を膨らます策弥。 けど、目は嬉しそうだった。 まぁ、そうだろうな。 おっさんの飯は美味いし。 たま~に、料理を教えてもらっていたが、やはりおっさんには勝てなかった。 それは、策弥も同様。 何度もチャレンジするが、おっさんより美味しいご飯を作れたことは一回もなかった。 案外素直にリビングを出ようとする策弥の後を追った。 ちょっと特殊な一軒家のため、リビングを一旦出ないとキッチンにたどり着けない。 最初はキッチンとリビングの間に壁はなかったが、おっさんの趣味によって壁が誕生した。 おっさんは、リフォームが好きなのは知ってる。 俺たちは十何年とこの一軒家で過ごしてきたが、家の内装は毎年変わっていた。 幼いころ、策弥が部屋の変わりように泣きだしたこともあるくらい、相当変わっていた時もあった。 なんて、昔のことを思いながら、冷蔵庫に手をかけた。 「いいのか、章。」 「あぁ。もう、腹はくくってる。」 そんな会話がされているとは知らずに。  
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