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「おっさん、策弥が!」
「あぁ、見てくる!」
まだ揺れるリビングを、おっさんは壁をつたって出る。
高松さんは机の下に潜り込んできた。
黒い携帯らしきものを触っていた。
「くっそ!」
ふとドアの方からおっさんの愚痴が聞こえる。
どうやら、さっきの地震で歪み、ドアが開けづらくなっていた。
ガチャガチャとドアノブを捻るが、引きことも、押すこともままならなかった。
「策!聞こえるか!」
ドンドンと扉を叩き、策弥の安否を確認する。
揺れは徐々に収まりつつあった。
動機が激しい。
耳の奥でドッドッと、脈打つ音が聞こえる。
息も少しずつ荒くなる。
今まで何回も地震があったのに、今回のは、何故か怖かった。
恐怖しかなかった。
落ち着かせようと胸あたりをつかむ。
ゆっくりと呼吸しようと、無理に息を吐いたり吸ったりする。
策弥!
「大丈夫かい?」
息をあげる俺を高松さんは覗き込んだ。
心配そうな顔をする彼を、俺はどういう顔で見たんだろう。
一瞬にして、高松さんの顔が変わった。
「はい、手を貸して。」
差しだされた手に、俺は言われたとおりに手を乗せた。
震えてる。
俺の手、痙攣かってくらいに震えてる。
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