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そんな俺の手を、高松さんはギュウっと握った。
「大丈夫。策弥くんは無事だよ。」
「・・・。」
答えたくても、声が出ない。
過呼吸だった。
「弟思いなんだね、拓弥くんは。顔真っ青にして。大丈夫だから。ほら、聞こえる?」
空いた手で、高松さんは耳にあてた。
聞こえてる?と聞いてるようなジェスチャーだった。
息苦しい中、聴覚に神経をとがらせる。
すると、微かながら、聞こえてきた。
「おっさーん!」
「策!大丈夫か?」
「大丈夫だけど、びっくりして思わずオレンジジュースをこぼしちゃった。」
「窓は!?」
「全滅。結構でかかったね。」
ドアの向こう側から、策弥の声が聞こえてきた。
焦らない、俺より少し低めの声。
徐々に脈も普通に戻り、息も整ってきた。
「すみま、せん。」
ようやく声が出た。
申し訳なさそうに高松さんを見る。
すると、高松さんは優しく俺にほほ笑んだ。
「あぁ、大丈夫だよ。揺れも収まったし、出るか。」
椅子をずらし、体を動かす高松さん。
ゆっくりと繋いでいた手で俺を引っ張った。
「足元に気をつけて。」
「ありがとうございます。」
引っ張り上げられ、俺は机の下から出てきた。
そして、おっさんを見る。
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