第二章

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  「拓弥!!!島が!!!傾いてる!!!!!!」 俺は耳を疑った。 島が傾くなんて、ありえない。 けど、視野はそれを否定する。 島が斜めになり、そして、ゆっくりと海に沈んでいく。 「父さん!!!!」 「父さん!!!!皆!!!!!」 思わず窓を叩く。 操縦者が「落ち着け」と叫んでいたが、それどころじゃない。 落ちつけるか!! 海へと沈む島を、俺たちは空から見ていた。 全力で窓を叩き、皆の名前を呼ぶ。 涙が頬をつたり、声が上擦る。 鼻水を必死にすすり、父さんと叫んだ。 「高松さん!」 策弥が振り返り、助けを求める。 けど、高松さんは「落ち着け。」の一言だけ。 思わず頭にきた。 窓を叩いてた手を下ろし、握りこぶしを作った。 そして、それを今度は高松さんに向ける。 「降ろしてください。」 「駄目だ。」 「降ろしてください。」 「駄目だ。」 「降ろしてくださいっ!!!!」 「駄目だっ!!!!!」 策弥より低い声がヘリコプター内でこだまする。 見た目以上に威圧的な声を出した高松さんに、策弥は呆然と見た。 俺も、何も言えなかった。  
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